ロキシー・ミュージックの名盤と言えば「アヴァロン」が有名ですが、このアルバムもロキシーの中期における名盤と言えるでしょう。なんといってもメロディがキャッチーです。初期の頃はあえてキャッチーさを避けていた印象がありましたが、このアルバムではもう全曲が口ずさめるほどの美しいメロディを持っています。ブライアン・フェリーは不思議な人で、ブラックミュージックへの造詣も深い一方で、クラシカルな要素も持っており、また一見ダンディな紳士に見えるのですが、ステージでは奇行を繰りひろげるという「分裂的な」性格を持った人です(デヴィッド・ボウイや田中康夫に通ずるところがあります)。また、ギターのフィル・マンザレラも語られることはあまりなく、目立つこともないギターリストですが、ニューウェーブ系のギターリストの先駆けとしてもっと評価されてもいい存在だと思います。
本作はブライアンのダンディな耽美主義が全開の作品です。耽美主義と言えば、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド系や、4AD系(コクトー・ツインズなど)、スウェード系などいろいろありますが、ブライアンの耽美主義は、それとは全く別の耽美主義なのです。耽美主義の人はナルシストが多いので、どうしても視野が狭くなり、よい作品を継続して発表することが難しいのですが、ブライアンはこのアルバムを発表した後、ロキシー・ミュージックを一時解散させており、その意味ではその選択は正しかったのだと思います。
話は変りますが、彼ら最後のアルバム「アヴァロン」は本当に独特のワビサビがあって、素晴らしいアルバムです。最近の曲はどのアーティストのどの曲も「歌詞を詰め込む」傾向にありますが、この「アヴァロン」は歌詞の行間を大事にしているといいますか、まさに俳句のような深みを持つ作品だと思います。少ない歌詞でいかにイメージを膨らませることができるか、ことばの余韻をどれだけ残すことができるか、このアルバムはそのことに挑戦したような構造を持っています。

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